小型化が進む現代の製造業において、製品の性能を左右する重要な要素が歯車です。しかし、用途に応じた適切な種類、材質、そして選定が不可欠であり、これらを誤ると予期せぬトラブルや性能低下につながる可能性もあります。
本記事では、用途別に小型歯車の選び方を深掘りし、適切な選定方法によって製品性能を最大限に引き出すための実践的な知識をご紹介していきます。

小型歯車の種類とそれぞれの特徴
なぜ歯車の選定が必要なのか
製品の小型化が進む現代の製造業において、限られたスペースの中で、求められる性能を発揮するため、歯車の役割はますます重要になっています。
不適切な歯車を選んでしまうと、騒音や振動の発生、摩耗による寿命の低下、さらには製品全体の故障につながる可能性もあります。その一方で、適切な歯車の選定をすることで、製品の信頼性、耐久性、そしてコストの効率化にもつながります。
小型歯車の種類
小型歯車には様々な種類があり、それぞれに得意な用途や特性があります。以下に代表的な小型歯車の種類とその特徴を解説します。
平歯車
最も一般的で、設計・製造が比較的容易な歯車です。平行な2軸間で力を伝達し、シンプルな構造で高い効率を実現します。中〜高速域でも使用可能ですが、静粛性では、はすば歯車に劣るため、騒音対策が課題になります。
はすば歯車
歯すじが斜めになっており、平歯車に比べて滑らかに噛み合い、騒音や振動を低減する特徴があります。より高精度な伝達や、高速回転、高負荷領域に適します。衝撃荷重が想定される場合は、歯幅・材料や軸受の余裕設計が重要です。軸方向の推力が発生するため、適切な軸受選定が必要になる場合があります。
かさ歯車
直行軸間での動力伝達に用いられる歯車です。ストレートは簡便、スパイラルは静粛・高負荷向き、ハイポイドは更に高トルク・静音だが滑りが増え潤滑要件が厳しい、などの違いがあります。建設機械や農業機械など、直角方向への動力伝達が必要な場面で活用されます。
ウォームギア
ウォームはねじ状、ウォームホイールはそれに噛合う歯車で、交差軸間で大きな減速比を一段で得られる点が最大の特徴です。セルフロックは条件付きで成立し、一般に効率は低く発熱しやすい点に注意が必要です。低速で大きなトルクを必要とする用途に有効です。
POTICONギヤ
POTICONギヤは、大塚化学が開発した樹脂複合材料POTICONからなる精密なプラスチック歯車です。極微細フィラーであるTISMOに由来する熱に強く変形しにくい特性により、複雑な形状でも精密に製造でき、製品の小型化や高機能化を可能とします。
さらに、自己潤滑グレードでは、荷重、速度、温度などの条件の検討は必要ですが、オイルやグリースなしでもスムーズに動く可能性があり、メンテナンスの手間とコストを削減できます。
また、樹脂単体と比較してPOTICONは、温度や湿度の変化に強く、製品駆動時の信頼性向上により、品質不良の低減や製造コストの削減に繋がります。
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https://www.otsukac.co.jp/advanced/materials-development-laboratory/gear-solution.html
小型歯車の材質と特性
歯車の性能は、その材質に大きく左右されます。用途や環境に応じて最適な材質を選ぶことが、歯車の寿命や効率、信頼性を確保するために不可欠です。予想される用途に適した素材を選びましょう。
金属製材質(ステンレス、真鍮、アルミ合金など)
金属製の歯車は、一般的に高強度で耐久性に優れています。
素材 | 主な特性 | 適した用途 | ||
---|---|---|---|---|
ステンレス | 優れた耐食性 一般構造用合金鋼に比べて強度・焼入性・歯面耐久性で不利な場合がある。摺動で焼付きリス |
水回り、医療機器、食品機械など衛生面が求められる環境やサビを避けたい場合 | ||
真鍮 | 切削性が良く加工コストを抑えやすい(小ロット・小物では結果的に安価になりやすい)、電気伝導性あり | 電気部品、一般的な小型機械 | ||
アルミ合金 | 軽量、優れた熱伝導性、加工しやすい | 軽負荷・低速・試作向けに有効。高負荷・連続運転には不向き(摩耗・かじりに注意)。航空宇宙では主に筐体や非歯接触部品用途、放熱が必要な用途 |
樹脂系材質(MCナイロン、POM、PEEKなど)
樹脂系の歯車は、軽量、静音性、自己潤滑性、耐食性に優れる点が特徴です。
素材 | 主な特性 | 適した用途 | ||
---|---|---|---|---|
MCナイロン | 耐摩耗・減衰性に優れる一方、吸水による寸法変化が大きく精密用途では留意が必要 | 幅広い産業機械の歯車 | ||
POM(ポリアセタール) | 寸法安定性が高い、優れた機械的強度や耐疲労性 | 精密さが求められる歯車、繰り返しの荷重がかかる用途(家電、OA機器など) | ||
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン) | 非常に高い耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性、優れた機械的強度、高価 | 高温環境や化学薬品など過酷な条件下、高い信頼性が求められる医療機器や航空宇宙分野の小型歯車 |
まとめ
現代のものづくりでは、歯車選びがとても大切です。歯車の種類や材料、組み合わせ方をよく知ることで、製品が静かに動き、長持ちするようになります。
大塚化学の「POTICONギヤ」は、特別な材料を使った精密な歯車です。熱に強く複雑な形も作れるので、製品を小さく高性能にでき、売上アップにつながります。
また、条件によってはオイルやグリースがいらないので、手入れの手間や費用が減り、製造のムダもなくなるほか、温度や湿気による寸法の安定性が向上するので、製品の信頼性が上がり、不良品が減ってコストも下がります。POTICONギヤの詳細については下記リンク先をご覧ください。


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