【コラム】積層痕とは?3Dプリンターで滑らかな仕上がりにするコツを解説

試作品や最終製品の品質向上を目指す製造業の現場では、積層痕を目立たなくし、滑らかな仕上がりを実現することが重要な課題となっています。

本記事では、積層痕が発生する原理から、実務で活用できる具体的な対策方法まで解説します。積層痕を最小限に抑え、高品質な3Dプリント製品を実現するためのノウハウを習得しましょう。

3Dプリンターの積層痕

積層痕とは

積層痕(レイヤーライン、ストライプ)とは、3Dプリンターで造形された製品の表面に現れる、微細な段差や筋状の模様を指します。これは、3Dプリンターが積層造形という特性上、材料を一層ずつ積み重ねて立体物を形成する過程で不可避的に発生するものです。

積層痕が発生するメカニズム

一般的なFDM(熱溶解積層方式)やFFF(熱溶解フィラメント方式)の3Dプリンターでは、加熱されたノズルから溶融した樹脂(フィラメント)を押し出し、XY平面上に一層ずつ描画し、それが冷却・固化することで造形が進みます。この「一層ずつ」というプロセスが積層痕の根本的な原因です。

  

     層の重なり:各層の境界部分に、わずかな段差やずれが生じます。特に曲面や傾斜面では、この段差が顕著になります。

  

     材料の冷却・収縮:押し出された材料が冷却・固化する際に、わずかな収縮や変形が生じ、層間の密着性や均一性に影響を与えることがあります。

  

     ノズルの移動:ノズルが移動する際の振動や、エクストルーダーの押し出し量のわずかな変動も、積層痕の発生に寄与します。

積層痕が製品品質に与える影響

3Dプリンティング(付加製造)特有の「積層痕」は、単なる外見の課題だけでなく、製品の機能や信頼性に直結する重要な要素です。主な影響は以下の3点に集約されます。

外観品質の低下

美観を損ね、製品の高級感やプロフェッショナルな印象を低下させます。特に、顧客に直接提示する試作品や最終製品においては、ブランドイメージに直結する問題となります。

機能性の低下

表面粗さが摩擦の増大や嵌合精度の低下、気密・水密性の喪失を招き、物理的な性能を損ないます。 また、凹凸に汚れが溜まりやすくなることで、清掃性や衛生面における信頼性も低下させます。

強度への影響

層間の結合が弱い場合、積層痕のある部分が応力集中点となり、剥離や破損のリスクを高める可能性があります。特に、積層方向に垂直な力に対しては、強度が低下しやすい傾向があります。

積層痕が目立つ主な原因

積層痕の目立ち方は、造形設定、使用する3Dプリンターの性能、材料特性など、複数の要因によって大きく左右されます。ここでは、主な原因を解説します。

積層ピッチ(レイヤー厚)の影響

積層ピッチとは、一層あたりの厚みのことです。このピッチが厚いほど、一層ごとの段差が大きくなり、積層痕が肉眼で認識しやすくなります。特に曲面や傾斜面では、階段状の段差がより顕著に現れます。積層ピッチを細かく設定すればするほど、積層痕は目立ちにくくなりますが、その分、造形時間が増加するというトレードオフの関係にあります。

造形速度と温度設定の問題

     造形速度:造形速度が速すぎると、材料が十分に溶融・定着する前に次の層が積み重ねられたり、ノズルから押し出される材料の量が不安定になったりすることがあります。これにより、層の均一性が損なわれ、積層痕が目立ちやすくなります。

  

     ノズル温度:材料が適切に溶融しない低温すぎると、層間の密着が悪くなり、層がはっきりと分離して見えます。逆に、高温すぎると材料が過度に流動し、ダレやにじみが発生し、表面が荒れる原因となります。

  

     ベッド温度:造形ベッドの温度が不適切だと、造形物の反りや剥がれが発生しやすくなり、これが積層痕の悪化に繋がることがあります。特に、ABSなどの収縮率が高い材料では重要です。

  

     冷却設定:造形中の冷却が不十分だと、材料が固まる前に次の層が積層され、形状が崩れたり、表面が波打ったりする原因となります。適切な冷却は、各層の形状を維持し、積層痕を抑制するために不可欠です。

3Dプリンターの機種による違い

3Dプリンターの性能や構造も、積層痕の目立ち方に大きく影響します。

 

     剛性と精度:フレームの剛性が低いプリンターや、駆動系の精度が低いプリンターでは、ノズルの振動や位置ずれが生じやすく、積層痕が悪化します。業務用機は一般的に高い剛性と精度を持ちます。

  

     エクストルーダーの性能:材料の押し出し量が安定しないエクストルーダーは、層の厚みにばらつきを生じさせ、積層痕を助長します。

  

     キャリブレーション:ベッドの水平調整(レベリング)やZ軸のオフセットが不正確だと、一層目の定着が悪くなったり、層の高さが不均一になったりして、積層痕の原因となります。

材料特性による影響

使用するフィラメントやレジンの種類も、積層痕の現れ方に影響を与えます。

 

     材料の収縮率:ABSなどの収縮率が高い材料は、冷却時に大きく収縮するため、反りや層間の剥離が発生しやすく、積層痕が悪化する傾向があります。

 

     粘度と流動性:材料の粘度や溶融時の流動性は、層間の密着性や表面の均一性に影響を与えます。

 

     フィラメントの品質:フィラメントの直径や真円度が均一でない場合や、ボイドなどがある場合や、吸湿して水分を含んでいる場合、エクストルーダーからの押し出し量が不安定になり、積層痕の原因となります。

3Dプリンターで滑らかな仕上がりにするための造形時の対策

積層痕を最小限に抑え、滑らかな造形を実現するためには、造形前の設定と準備が非常に重要です。ここでは、具体的な対策方法を解説します。

積層ピッチを細かく設定する

最も基本的な対策の一つが、積層ピッチ(レイヤー厚)を細かく設定することです。例えば、0.2mmから0.1mm、あるいはそれ以下に設定することで、一層あたりの段差が小さくなり、積層痕が目立ちにくくなります。ただし、積層ピッチを細かくすると、その分だけ層の数が増え、造形時間が大幅に長くなる点に注意が必要です。製品の要求品質と造形時間のバランスを考慮して、最適なピッチを選択しましょう。

最適な造形速度の設定

造形速度は、速すぎても遅すぎても問題が生じます。一般的には、材料やプリンターの性能に合わせて、適切な速度を見つけることが重要です。

 

     遅すぎず、速すぎず:造形速度が速すぎると、材料が十分に溶融・定着せず、層間の密着性が低下したり、表面が荒れたりします。逆に遅すぎると、特に小型・細部の造形ではノズルが長時間同じ場所に留まることで熱がこもり、材料が過剰に溶けてダレが生じたり、造形時間が無駄に長くなったりします。

 

     テストプリントの実施:推奨される造形速度を参考に、実際にテストプリントを行い、積層痕の目立ち具合や表面の均一性を確認しながら、最適な速度を見つけることが効果的です。

ノズル温度とベッド温度の調整

材料メーカーが推奨するノズル温度とベッド温度は、積層痕の抑制に直結します。これらの温度設定を適切に行うことで、材料の溶融状態と定着性を最適化できます。

 

     ノズル温度:低すぎると材料の押し出しが不安定になり、層間の結合が悪くなります。高すぎると材料が過度に流動し、形状が崩れたり、ストリング(糸引き)が発生したりします。もちろんリトラクション設定も重要です。

 

     ベッド温度:特に反りやすい材料(ABSなど)では、ベッド温度を適切に設定することで、造形物の定着を改善し、積層痕の原因となる反りを防ぎます。

 

     冷却ファンの設定:一層が積層された後、適切に冷却することで、次の層が積層されるまでに形状が安定し、積層痕の発生を抑えることができます。特にPLAなど冷却が必要な材料では重要です。

造形方向の最適化

造形物の向きを変えるだけで、積層痕の目立ち方を大きく改善できる場合があります。積層痕は、傾斜面や曲面で特に顕著に現れるため、これらの面がZ軸方向(積層方向)に対して緩やかな傾斜になるように配置することで、段差を小さく見せることができます。

 

     目立つ面を避ける:製品の最も重要な面や、美観が求められる面が、積層痕が目立ちにくい方向(垂直に近い面など)になるように配置を調整します。

 

     スライサーソフトの活用:最新のスライサーソフトには、造形方向を最適化するためのシミュレーション機能が搭載されているものもあります。

サポート材の適切な配置

オーバーハング(宙に浮いた部分)がある造形物にはサポート材が必要ですが、サポート材の付き方や除去方法が不適切だと、その痕跡が積層痕として残ってしまいます。

 

     サポート材の種類と密度:除去しやすいツリーサポートやリニアサポート、水溶性サポート材などを適切に選択し、密度や接触面の設定を調整することで、除去後の表面品質を向上させます。

 

     除去後の処理:サポート材を除去した後、残った痕跡をヤスリなどで軽く研磨することで、積層痕を目立たなくすることができます。

積層痕を目立たなくする後処理の方法

造形時の対策だけでは完全に積層痕をなくすことが難しい場合や、さらに高い表面品質が求められる場合には、後処理が不可欠です。ここでは、主要な後処理方法を解説します。

研磨・サンディング処理

最も一般的で物理的な方法が、研磨(サンディング)です。ヤスリやサンドペーパーを使って、造形物の表面を物理的に削り、積層痕の段差を滑らかにします。

 

     手順:粗い番手から始め、徐々に細かい番手のヤスリやサンドペーパーに切り替えて研磨します。電動工具(サンダーなど)を使用することで、効率的に作業を進めることができます。

 

     利点:ほとんどの材料に適用可能で、比較的容易に実施できます。

 

     注意点:手作業では均一な研磨が難しく、時間と労力がかかります。また、細かい部分の研磨は困難な場合があります。

化学研磨(アセトンベーパー等)

特定の樹脂材料に有効なのが、化学薬品を用いた研磨方法です。代表的なのは、ABS樹脂に対するアセトンベーパー(アセトン蒸気)処理です。

 

     原理:アセトン蒸気がABS樹脂の表面をわずかに溶解させ、表面張力によって平滑化されます。これにより、積層痕が消え、光沢のある滑らかな表面が得られます。

 

     利点:手作業による研磨では難しい複雑な形状でも、均一に処理が可能です。

 

     注意点:アセトンは引火性が高く、有毒ガスを発生するため、適切な換気と安全対策(保護具の着用など)が必須です。また、化学薬品に耐性の強い他の材料には効果がありません。

塗装・コーティング

積層痕を隠し、表面の質感や色を向上させるために、塗装やコーティングが広く用いられます。

 

     手順:まず、積層痕が目立つ場合は、サーフェイサーやプライマーを塗布して表面を平滑化します。その後、目的の色や質感の塗料をスプレーガンや刷毛で塗布します。

 

     利点:色や光沢、質感の自由度が高く、製品の美観を大幅に向上させることができます。耐候性や耐薬品性を付与することも可能です。

 

     注意点:塗装の厚みや均一性によっては、ディテールが損なわれる可能性があります。乾燥時間や塗料の選定も重要です。

ブラスト処理

ブラスト処理(サンドブラスト、ショットブラストなど)は、微細な粒子を高圧で吹き付けることで、表面を均一に荒らし、梨地(マット)仕上げにする方法です。

 

     原理:粒子が表面に衝突することで、積層痕の段差が削られ、全体的に均一な凹凸が形成されます。

 

     利点:短時間で広範囲を均一に処理でき、手作業では難しい均一なマット仕上げが可能です。

 

     注意点:表面が荒れるため、光沢のある仕上げには不向きです。使用するメディアの種類や圧力によって仕上がりが異なります。

大塚化学の「ポチコンフィラメント」

積層痕を目立たなくし、高品質な仕上がりを実現するためには、造形条件の最適化だけでなく、使用するフィラメントの選定も重要です。フィラメントの寸法安定性や収縮特性は、表面品質や造形精度に大きく影響します。

大塚化学の3Dプリンタ用フィラメント「ポチコンフィラメント」は、高い寸法精度と精密造形性を特長とする産業用耐熱フィラメントです。優れた表面平滑性と真円度が高く均一な太さのフィラメントにより、長時間にわたり安定した造形が可能で、外観品質が求められる試作品や機能部品の製作にも適しています。

また、射出成形品と同等レベルの強度と耐熱性を備えており、試作品だけでなく工程搬送トレーや減速機用ギヤなどの実部品用途にも活用されています。高品質な外観と機械特性の両立を求める3Dプリンタユーザーにとって、有力な選択肢の一つです。

「表面品質を高めたい」「高い造形精度で機能部品を製作したい」という課題をお持ちの方は、ポチコンフィラメントの活用をご検討ください。超微細チタン酸カリウム繊維「ティスモ」を配合した独自の複合材料技術によって、精密造形性と実用強度を両立し、製造現場における3Dプリンタ活用の可能性を広げます。


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まとめ

3Dプリンターにおける積層痕は、造形原理上避けられない現象ですが、適切な対策を講じることでその影響を最小限に抑え、高品質な製品を実現することが可能です。

製造業の現場においては、製品の用途や求められる品質レベル、コスト、生産時間などを総合的に考慮し、最適な対策を組み合わせることが重要です。これらのノウハウを実践することで、3Dプリンター活用の幅を広げ、製品開発の効率化と品質向上に貢献できるでしょう。積層痕にお困りの方は、当社で相談も承っております。まずはお気軽にご相談ください。


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