大塚化学株式会社

機能性高分子研究所

リビングラジカル重合法を用いた機能性ポリマーの研究

ラジカル重合は、多くのビニルモノマーを穏和な条件で重合出来る汎用性の観点から、ポリマーの工業生産に広く用いられている。リビングラジカル重合法は、そのラジカル反応の汎用性を活かしたまま、生成するポリマーの分子量、分子量分布、および構造の精密制御が可能な重合法である。機能性高分子研究所では、京都大学・山子教授のグループと共に、有機テルル化合物を用いたリビングラジカル重合法(TERP:Organo tellurium-mediated living radical polymerization)の有用性に着目し研究開発を行ってきました。TERPを用いて合成された機能性ポリマー製品群「TERPLUS」を顔料分散剤、及び粘着剤用途へ製品展開しています。TERPは、モノマー種や反応溶媒の適用範囲や制御可能な分子量領域が幅広く、工業的な機能性ポリマー材料の製造法として適しており、更なる応用展開を目指し、TERPLUSの用途開発やプロセス開発を行っています。

3分でわかる!リビングラジカル重合

リビングラジカル重合法を用いた機能性ポリマーの研究

研究所の特徴

  1. 均一ネットワーク構造の応用研究

    均一ネットワーク構造の応用研究

    TERPで合成した分子量分布が制御された高分子を後架橋する事で、均一なネットワーク構造を有する架橋体が得られます。その架橋体は、高い凝集力、耐熱性、伸縮性などが得られることが分かっています。機能性高分子研究所では、それら特性を活用した様々な用途開発を行っています。 

  2. 高分子ミセル形態に関する応用研究

    高分子ミセル形態に関する応用研究

    TERPのブロック共重合体の設計自由度の高さを活かした、高分子ミセルに関する研究を行っています。ブロック共重合体の分子量・組成を精密設計することで、マトリックス樹脂へ添加した際のミセル形態を制御する事が出来ます。用途に応じミセル形態を最適化する事で機能発現を目指します。

  3. ブロック共重合体の機能化に関する研究

    ブロック共重合体の機能化に関する研究

    TERPのブロック共重合体の設計自由度の高さを活かし、ブロック共重合体の機能化に関する研究を行っています。例えば、表面改質機能を有するセグメントAと基材密着機能を有するセグメントBを有するABブロック共重合体を基材へコートした塗膜は、基材への濡れ性や形態安定性を向上させながら、表面を改質する事が出来ます。用途に応じ機能、構造の最適化に取り組んでいます。

  4. 工業化に向けたプロセス開発

    工業化に向けたプロセス開発

    機能性高分子研究所では、TERPLUSを工業生産するためのプロセス開発にも取り組んでいます。TERPプラントでは、重合、生成から有機テルル化合物の回収・リサイクルまでを行います。ラボから多段階スケールで保有する重合設備を用い、データ蓄積、検証することで円滑な量産化を目指しています。

開発事例

  • 研究DX

    研究DX

    TERPでは、分子量分布が狭く精密な高分子が得られます。分子量が制御された高分子から得られる、高分子鎖の絡み合い等の精密なデータは、AIや機械学習を用いたデータ解析に適していると考えています。研究DXを活用することで、TERPLUSの機能化・用途開発の加速を目指します。

  • 顔料分散剤の開発

    顔料分散剤の開発

    TERPの特長である極性官能基を有するモノマーの重合制御とブロック共重合体の設計自由度の高さを活かし、顔料分散剤を開発し上市しています。顔料に吸着した際にテイル構造を取るブロック構造が分散剤として作用します。

  • 粘着剤の開発

    粘着剤の開発

    高分子量領域でも高度に分子量と分子量分布の制御が可能なTERPの特長を活かし、粘着剤を開発し上市しています。均一なネットワーク構造を有する粘着剤は、高温領域まで弾性率を維持することで耐熱性を有します。

  • 掲載論文・口頭発表

    書籍等出版物


    有機テルル化合物を用いたリビングラジカル重合(TERP)による粘着剤の工業化
    2023年12月 新訂三版 ラジカル重合ハンドブック


    リビングラジカル重合法を用いた高機能ポリマー“TERPLUS”の開発
    2018年8月 リビングラジカル重合―機能性高分子の合成と応用展開


    リビングラジカル重合を用いた粘着剤の開発と産業化
    2016年10月 日本接着学会誌


    TERP 法を用いた機能性ポリマー開発
    2016年2月 精密重合が拓く高分子合成 (CSJ:20)


    リビングラジカル重合法による粘着剤開発
    2015年7月 コンバーテック誌


    リビングラジカル重合法で合成した光学用粘着剤の設計と特性
    2012年10月 光学用粘・接着剤と貼り合わせ技術


    リビングラジカル重合技術を用いた事業化最前線
    2010年10月 高分子学会誌


    新しいリビングラジカル重合法を用いた機能性ポリマーの開発
    2010年8月 コンバーテック誌


    新しいリビングラジカル重合法を用いた機能性高分子材料の創生
    2010年7月 色材協会誌



    講演・学会発表


    有機テルル化合物を用いたリビングラジカル重合(TERP)の工業化
    2023年10月 高分子学会 Webinar


    TERPLUS 分散剤:TERP を基盤とする分散剤開発
    2022年11月 ポリマー材料フォーラム


    ブロックポリマー添加によるエポキシ樹脂の破壊靭性向上
    2022年11月 ポリマー材料フォーラム


    ブロックポリマー添加によるエポキシ樹脂の破壊靭性向上
    2022年10月 第 33 回高分子加工技術討論会


    リビングラジカル重合を用いた粘着剤の開発
    2018年11月 ポリマー材料フォーラム


    リビングラジカル重合法を用いた高機能ポリマー“TERPLUS”の開発と工業化
    20018年11月 ポリマー材料フォーラム


    リビングラジカル重合法を用いた高機能ポリマー"TERPLUS"の開発と工業化
    2018年5月 研究講演会

関連製品

TERPLUSの粘着剤シリーズは高分子量域での高度な分子量制御により均一なネットワークの構築に寄与、低汚染性、耐熱性、応力緩和、弾性率制御と様々なニーズへ適用できます

  • 粘着剤
  • 粘着テープ

リビングラジカル重合の一つであるTERP法にて重合されたTERPLUSはブロックポリマー構造により顔料吸着、及び分散媒親和に作用する成分の配列を制御することが可能で、顔料表面への強固な吸着性と、分散媒親和による立体安定性が発現されます。結果、優れた分散性と、分散安定性の両立が可能となります。

  • 塗料
  • ポリマー
  • 分散剤

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