既存のリビング重合技術
1993年のGeorgesによるNMPの最初の報告以来、リビングラジカル重合法を産業界で利用する試みは世界中で活発な研究が行われています。しかし、既存の方法はそれぞれに固有の問題を抱えており、産業界で十分利用できる技術になっていないのが現状です。
最近15年弱の間に開発されてきた、代表的なリビングラジカル重合法を紹介いたします。
- ニトロキシドを介するリビングラジカル重合(NMP)
ヒドロキシルアミン誘導体を中心とする安定ラジカルをドーマント種として用い、これを加熱することにより、可逆的に活性ラジカルであるニトロキシルラジカルを生成する方法である。
- 原子移動ラジカル重合(ATRP)
有機ハロゲン化合物をドーマント種として用い、ルテニウムや銅等の遷移金属触媒錯体の酸化還元反応を利用することで、可逆的にラジカル種を発生させる方法である
- 可逆的付加・脱離連鎖移動重合反応(RAFT)
トリチオカーボネートやジチオエステルなどのチオカルボニル化合物をドーマント種として用い、これとラジカル種との可逆的な付加開裂反応によりラジカル種を発生させる方法である。キサンテートを用いるものを特にMADIXと呼ぶ場合もある。
ドーマント種とは:ラジカル反応において休眠種とも呼ばれる安定な化学種である。